一泊二日の強行日程を終えた哲彦は、幸運にも、かすみと会うことは、なかった。
そんななか、仕事中に、下原文子からメールがきた。
『今日、夜ひまでか?たまには飲みに行きたいな』
特に断る理由もなく、普通の食事ばかりだったので、すぐに了承した。
『喜んで。行きたいところとかある?あんまり高いところとかは考えちゃうけどね(笑)』
『居酒屋でいいですよ〜。楽しく飲みたいですもん』
『了解』
メールを終えた哲彦は、かすみからメールが入っているのに気づいた。
『この2、3日で会えますか?ほんの2、3時間でいいので…』
哲彦は、少し考えこんでしまった。
(ちょっと、ハードスケジュールだなあ…。なかなか、夜早く帰れないし…)
だが、プラスに考えるようにした。
(考えてもみれば、こんなおじさんを、慕ってくれていること自体ありがたいことだからなあ…まあ、なんとかやりくりするか)
とりあえず、『調整するんで、決まったらメールする』と返信した。
まずは、下原文子とのデートのことを考えた。
就業後、2人は最近出来た居酒屋へ向かった。
かなり、リーズナブルな居酒屋だ。
「ごめんね…こういうところで。」
「いえ、いいですよ。結構カップルで来てる人もいるし、雰囲気的に問題ないですよ」
それを聞いて、哲彦は、ひとまず安心した。
「じゃあ、何飲む?俺はビール飲むけど…」
「私もそれでいいですよ」
「あんまり無理しないでね」
「大丈夫ですよ〜。もし、酔っ払ったら、泊めてくださいね」
「え?」
「冗談ですよ〜」
と、文子は言ってみたものの、多少は期待していた。
(どうしたんだろ…私。やっぱり期待してるのかな。でも成り行きにまかせてみよう)
そう思った文子は、二日酔い覚悟で飲むことを、覚悟した
その雰囲気を察知した哲彦は、(流れにまかせて、彼女を傷つけることは、出来ないな)と思った
酔った場所に備えて、同じ部署の後輩の女性にメールをして、酔った場合に彼女を泊めてもらうことを依頼した。