「この時計いつ見ても可愛いな〜」
アタシが呟くと、じいさんはこう言った。
「あんたのお気に入りなら間違いなかろう。店員さんコレ包んでくれ」
じいさんはアタシの反応を見る間もなく即決し、財布を取り出す。
店員が支払い方法を尋ねるとじいさんは、おもむろにクレジットカードを差し出した。
そして決済を済ませ、レシートに署名するじいさんの名前を見た時、アタシは驚いた。
「カトウ…マサアキ?」
アタシの彼氏と同姓同名だ!
びっくりしたアタシが何か言おうとすると、じいさんは『ちょっとトイレに』と言って急に居なくなった。
10分経ったがじいさんは戻って来ない。
そわそわしていると店員が、『実は10分後に渡してくれと頼まれたのですが』と言いながら、今買ったばかりの時計とメモをアタシに手渡した。
メモにはこう書いてあった。
『今日は誕生日おめでとう』
――なんでアタシの誕生日を?
結局じいさんは戻っては来ず、アタシの手元には時計だけが残った。
じいさんの単なるイタズラか、はたまた彼氏のサプライズなのか、いまだに謎のままだ。
次回のデートは、この時計をつけて…彼に問いただしてみよう。そうアタシは思った。