desteny?

meeco  2010-03-03投稿
閲覧数[240] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「淳さん!!!!」

ICUの扉の前の廊下に、七星の叫ぶ声が響き渡っていた。

「あっちゃん・・・!!」

私も、気持ちを抑え切れず、叫び声を上げた―\r

淳が寝かされている、可動式のベットを追う様に、担当の医師と、看護士が三人、ICUの扉から出て来た。

「意識は、まだ混濁していますが、処置も終わりまして、今から一旦、一般病室へ移りますので・・・。御家族の方は?」

「一度、自宅に戻りました。直ぐに連絡して来ます。」

私は、急ぎ足で、受付の前に据え付けて有る、公衆電話の方へ向かった―\r

携帯電話を取り出し、淳の実家の電話番号を震える指で、検索した。

淳の実家に電話を掛けるのは、高校生の時以来だった。

「もしもし、香里です・・・。」

「香里ちゃん?淳、淳はどう?」

「意識は、まだ混濁していますが、今から、一般病棟へ移れるみたいで・・・。先生が御家族は?って、探していて。」

「そう・・・。良かった。今すぐ、お父さんと、病院に戻るわね。ありがとう・・・。付いててやって、淳に。」

「はい・・・。先生に戻ると言ってたと伝えます。」

受話器を置き、走ってICUの前に戻ると、茉莉子以外の姿は無く、廊下は、しんと静まり返って居た―\r

「おばさん、何だって?」

「今から、病院に戻るって・・・。それより、淳は?」

「病棟へベットで運ばれてった・・・。ずっと、何かうわ言、言ってた。香里が戻るまで、私だけ待ってたの。」

「ゴメンね・・・。病室は、どこか聞いてる?」

「うん、13階だって。たった今だから、行けば、分かると思う。行こ?」

私と茉莉子は、淳の病室が有ると言う、13階の外科病棟へエレベーターで向かった。茉莉子は、顔が恐張って居て、一言も喋らなかった。


エレベーターを13階で降りると、目の前にナースステーションが有り、慌ただしく、私達の前を看護士が一人、駆けて行った。あまりの物々しい様子に、声を掛ける事が出来ず、看護士の後ろを付いて行くと、七星と店の従業員達が、丁度、病室の中へ入ろうとしている所だった。

「あそこ・・・。淳の部屋。」
茉莉子は、私の手を握り、勢いよく、そちらへ走った。引っ張られる様にして、私も、病室に急いだ―\r

「淳さんのお母さんは?」
七星は、目に涙を薄っすら浮かべて言った。

「お父さんと、すぐ戻るって・・・。」

「そう・・・。淳さんね・・・、さっきから、ずっと香里さんの名前を呼んでるの。それに、ゴメン、ゴメンって。」

七星の涙の訳が、理解出来た。淳が、きっと私の名前を呼んでいた事に違い無かった―\r




i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 meeco 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ