先生の言葉を、生徒達は熱心に聞いていた。俺も心に焼き付けるように聞いた。あくまでこの学校は『社会で』生徒が活躍することを狙っているらしい。
ただし、言っていることは間違いない。この教育方針は将来必ずプラスになるだろう。
先生が左手にはめた腕時計をちらっと見た。俺も時計を見ようと顔を上げると時刻は9時10分、授業終了10分前を差していた。
「では、残りの時間は授業の進め方等について話す。」
松葉先生は机の上のプリントを生徒に配りだした。配られたプリントには年間計画や指導内容等が記載されていた。そして、そこから視線を下げていくと少し気になる文章が書いてあった。しかし、先生が話しだしたので俺は顔を上げた。
「これが今年の履修範囲だ。このように授業を進めていく予定なので確認しておくよう。」
一旦先生が話し終わると、生徒が次々とプリントに視線を移す。それを見ながら先生は続けた。
「今から授業をするにあたってお前らに注意がある。よく聞いておくよう。」
先生の言葉に生徒達は次々と顔を上げる。
「一つ!私の授業では、指示があるとき以外は日本語での発言禁止!もちろん私語もだ。ただし、英語での私語は許可する。」
先生がそう言うと教室は少しざわついた。授業中は基本英語しか話せない、そういうルールが定められたのだ。だが、ここで辺りがざわついた理由はそれではなく、英語なら私語OKだということに驚いたからであろう。
「私は私語でも生徒が英語を積極的に使うことは良いことだと考えている。だから、むしろ私語を推奨しよう。ただし、周囲に迷惑をかけるものは禁止する。」
先生がそう言うと、ちょうどいいところでチャイムがなった。
「では、次の授業からは教科書を使うので忘れないこと。Everyone stand up! See you next time!」
「See you.」
今回は大きな声で挨拶できたので松葉先生は満足そうに帰っていった。その後すぐに教室内はやかましくなった。
「あれ、英語の先生だって!ありえな〜い!」
こんな声が近くで聞こえる。もちろん松葉先生の話だ。松葉先生の登場は俺達にとってすごく衝撃的だった。しばらくすると怜と霧島が俺のところへやってきた。