「淳さん、苦しそう・・・。」
七星は、涙を流しながらそう言った。
従業員も、七星も、ベットの前で、神妙な面持ちで、淳を見守って居た―\r
「あっちゃん・・・。」
私の名前を呼んでいた―\r
ゴメンと謝っていた―\r
七星は、私にそう言った。謝る事って、何だろう―\r
私は、必死に考えていた。
花火の事だろうか―\r
今日、二人で見に行く筈だった、花火大会―\r
今まで、頭から抜け落ちて居た、淳との約束。その事だろうか・・・。
「淳さんっ!!!」
その時、七星が叫んだ―\r
「か、香里・・・?ゴ、ゴメン、ゴメンな・・・、俺・・・。」
「大丈夫?淳さん!!」
七星は、淳の耳元で必死に呼び掛けていた。淳は、目を細いながらも、一生懸命、開けようとしていた。
「香里は・・・?」
次の瞬間、七星は私を睨み付けた―\r
「あっちゃん・・・。私、ここに居るよ?無理して、喋らないで。」
七星からの視線を感じながらも、私は、淳にそう呼び掛けた―\r
「そっかぁ・・・。今日の事ゴメンな、花火・・・。」
茉莉子は、七星や従業員に病室を出る様に、静かに言った。
七星は、納得が行かない様子ながら、渋々、廊下へと出て行った。
病室には、私と淳の二人っ切りになった―\r
「そんな事・・・。気にしてないよ。」
そう言った瞬間、病室の窓を見ると、遠くに、打ち上げ花火が見え、ドンと遅れて、大きな音が聞こえて来た。
「花火・・・、か?聞こえた、音が・・・。」
「見には行けなかったけど、ここから見えるよ?13階だから、人混みから見るより、よく見える・・・。特等席だよ、ここ・・・。」
私は、淳に笑みを投げ掛けた。
「そうか・・・。約束守れなくて悪い・・・。香里?俺の鞄、有るか・・・?」
私は、ベットの周りに淳の鞄が無いか、探した。
「えっっと、これ、だった?有ったよ。」
「中、見てくれ・・・。包装された、箱が有るだろ・・・?」
乱雑に荷物が詰め込まれた中に、小さい包み紙にリボンが付いた、箱らしき物が見えた。
「これ・・・、かな?」
手に持ち、淳の目の前に出した。
「うん・・・。それ。開けてみて。包み紙・・・。」
私は、包装紙を丁寧に開いた―\r
「サイズ、合うか?」
中からは、ジュエリーボックスが出て来た。そっと開くと、デザインリングの真ん中に、大粒のダイヤモンドが付いた、リングが刺さっていた―\r
「これ・・・。私に・・・?」
「今日、花火を見ながら渡そうと思ってた・・・。婚約指輪って・・・、やつ?」
荒い息で、必死に淳は少し照れた表情を浮かべ、私にそう言った―\r