華麗に宙を翔け、神速の一撃を振り下ろすノア。
それにあわせて、半次郎が刀を振り下ろす。だがその軌道は、ノアには向いていなかった。
ノアの攻撃を十分引き付けると、半次郎は自らの刀をあてて弾き落とした。
結果、互いの軌道を変えさせた半次郎の一撃はノアへと向かい、ノアの一撃は半次郎の左肩をかすめて大地を切り裂いた。
軍配は半次郎に上がったかに思えた。
だが、彼の刀は半分から先を失い、その切っ先はノアにはとどいていなかった。
「…剣技については、さほど教える必要はなさそうだな。
今の技は誰に習ったのだ?」
「先日の川中島で南雲一蔵という剣士と戦った際、私の攻撃をはじいた刀で、そのまま突くという攻撃をうけました。
こういう戦い方もあるのかと、その時に学ばせて貰いました」
「…なるほどな、オマエは実戦の中で急速に成長する種のようだな。
僅かな日数で別人かと思う程の上達は、それが理由か」
大地を切り裂いた剣を無造作に引き抜くと、ノアは僅かに口元を緩めた。
「面白い男だ、オマエにはまだ眠ったままの力がありそうだな。
オマエにならワタシが辿り着けなかった領域まで、足を踏み入れることができるやもしれぬな」
ノアほどの実力者が辿り着けぬ領域があるのかと、半次郎は衝撃をうけていた。
あるいは、シャンバラにはノアの上をいく存在がいるのかもしれないと思ったが、それを確認しようとは考えなかった。
シャンバラに関係することは一切干渉しない、それがノアに教えを請うための最低条件だと、半次郎は心得ていたからだ。
「いいだろう、修行をつけてやる。
ただし、オマエのために時間を割いてやる余裕はないから、通路を塞いでまわる片手間でしか教えてやれんぞ」
「構いません、宜しくお願いしますっ!」