そのとき、急に強い風が吹いた。
アユミは髪を押さえながらシゲルの顔を見た。
(なに見てるんだろう。)
ずっと遠くを見つめていたシゲルが口を開いた。
「お前…ここから逃げた方がいいぞ」
「え、なんで…」
その瞬間、キーンと耳を痛めるような音がとどろいた。
開けたすぐ目の前には巨大な戦闘艇―――\r
足元に乱射された銃弾の熱が土手の草原を焦がした。
「なんなのアレっ!ねえ!」
アユミの足がすくむ。戦闘艇の左右の翼からは絶えずオレンジの光がフラッシュしている。
「来たな!」
シゲルに目をやると、どこから出したのか…手にした銃を戦闘艇に向け、シゲルは何発も発砲した。
(一体どうなってるの…)
なにより自分の身に危険を感じたアユミは走り出していた。