「待って!」
シゲルは足を止めた。後ろでアユミが辛そうに肩で息をしていた。
「なんだよお前…こんなとこで」
「もう無理、走れないよ」
そう言ったとき、足元を見ていたアユミの視界にシゲルの顔が映った。
あまりの不意打ちにアユミは一瞬息を詰まらせた。
シゲルが、うっすらと笑みを浮かべながら、アユミに言った。
「じゃあお前、このこと担任に言わないな?」
「なっ何?こんなときに」
「お前、クラスのヤツにも近所のおばちゃんにも言わないな?」
「なに言ってるの…!じゃない、こんなの人に言ったって誰もわかってくれないよ!」
「よし、それでいい」
アユミの顔を覗き込むシゲルの表情はさらにニヤニヤし出した。
アユミの耳に戦闘艇の迫る音が響く。
だめだ、もうこんなに近い。
アユミはぎゅっと目をつむった。
目の横に汗がにじむ―――\r
「ほら、乗れ!」
シゲルの声。はっと目を開けたアユミの視線の先には―――\r
「恐…竜……?」