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帰宅時――
さっき、俺が乗って来たママチャリの2人乗りを考えたが、
俺もユウも、肉体的にボロボロゆえ、その考えは、すぐに却下された。
『ユウ。ママチャリは明日、俺が取りに来るから、今日はタクシーで帰ろうな。』
『うん。』
事務所を出てから、タクシー乗り場までたどり着くまでに、
また、さっきの若者5人が追いかけてくるのではないかと、ハラハラしたが、
その心配は無用だった。
『ユウ。家に帰ったら、母さんに傷の消毒をしてもらわないとな。』
『オヤジこそ、もろにパンチ食らっただろ?!大丈夫かよ?!』
俺達は、お互いの顔の傷の状態を確かめ合いながら、
腫れた目元と切れた口元で、その痛みに耐えながら、タクシーを待つ事にした。
『‥‥しかしなぁ‥‥‥。まさか絡まれていたのが、ユウだとは思わなかったよ。』
『‥‥オヤジ‥‥あのさ‥‥‥。』
『ん?!何だ?!ユウ?!』
『色々心配掛けてごめん。』
『おっ?!どうした?!
父さんの方こそ、今度の事で、ユウとリョウに、色々心配掛けたと思う。
すまなかったな。』
正直、驚いた。
ユウが、こんなに素直に、自分の感情を表現してくれたのは、
かなり久しぶりの事だったからだ。
『俺‥‥今、学校でイジメにあっててさ。
言うのもカッコ悪いし、母さんに知れたら絶対騒ぐし、
うぜーって思って黙ってた。』
ユウの口からどんどん飛び出す、予想もしていなかった言葉の数々に、
俺は、黙って耳を傾ける事にした。