こんな力、無かったら良かったのに。
こんな力、無かったら、父上に愛されたのに。
なんで…なんで…?
「あ…うぅぅ…」
ギィィィ…と床がきしむ音が聞こえた。
ズキズキと痛む頭を巡らせ、自分の状況を確認する。どうやら手足が縛られている他は特に何もされていなかった。
床のゆれかたから考えて船の中にいるらしい。
(あぁ…鬼使いフウリ、一生の不覚…)
まさか逃げて身を隠した船が海賊船だったなんて。しかも寝ている間に他の海賊船との戦闘に巻き込まれてさらわれるなんて!!
でも、これで良かったのかも知れない。
偶然だけど、父上からは
逃げられたのだ。
そこまで考えて、フウリはやっと実感がわいてきた。
そうだ。これからは自由なんだ。父上に言われるがままの人生とはサヨナラ!!
フウリの胸が期待でいっぱいになったその時、
ギィィィ…
誰かがこの部屋に近づいてくる音が聞こえた。