来世で逢いましょう 第十一話4

カルロス伊藤  2010-03-06投稿
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歌い終わったNEOは恥ずかしそうにマイクを置いた。権藤は変に気を遣うよりストレートに言った方がいいと判断した。
「ネオさん…ひょっとして音痴ですか?」
あまりのストレートな問い掛けに、NEOは顔から火が出そうになった。
「ずいぶんハッキリとおっしゃるのね。まあ、それくらい単刀直入の方が政治家としては国民から信頼されるでしょうけど」
「いや、気に障ったのなら大変失礼しました。でも、最後まで歌ってくれた事、とても嬉しく思ってます」
「だって途中で止めたら余計恥ずかしいじゃないですか」
「敬服致しました。…こんな事聞くのも何なんですが…気にしてらっしゃるんですか…音痴の事…」
「気にしてない…って言ったら嘘になります」
「そうですよね…実は僕も小さい頃音痴だったんです」
「え?」
「でも、あるヴォイストレーナーのレクチャーを受けて劇的に直ったんですよ」
「直るものなんですか?」
「勿論。もし良かったら僕がレクチャーしますよ」
「ええ、是非!」
権藤は驚いた。軽い冗談で言ったつもりだったが、NEOが直ぐさま話に食いついてきたからだ。
【トゥルル…トゥルル…】
「ハイ!…あ、はい、分かりました」
「間もなく時間だそうです。…こうしましょう。独立云々の話は一旦保留です。また追って会談の場を設けましょう。…で、次回は全くのプライベートでこの店でお会いしませんか?ネオさんの歌のレクチャーをさせて下さい」
NEOは一瞬戸惑ったが、
「あまり気乗りはしませんが…せっかくの機会ですからお願いしても宜しいですか」
「よし!交渉成立です。つきましてはネオさん、この次までの宿題です。朝起きた時と夜寝る時の毎日二回、ドレミファソラシドシラソファミレド、を声に出して十回繰り返して下さい」
「ハァ、分かりました」
「では一週間後にここで会いましょう…あ、大丈夫ですよ、レッスン料は一切頂きませんから(笑)」
「そうして頂けると助かります(笑)」

店を出て彼女と別れた後、官邸に帰る公用車の中で権藤は何だか変な気持ちになった。(高校生の頃、気になっていた女の子とのデートの約束を取り付けた時の喜びと高揚感)めいた物をふと思い出した。
一方NEOも、今までコンプレックスにしていた物が払拭されるかも、という期待感で胸が高鳴った。今から大それた事を仕出かそうとしている事さえ一瞬忘れ…。


(続く)



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