「安野さん!」
帰りぎわまた藤崎くんが声をかけてきた。
「何?」
「今日みんなでカラオケ行くんだけど、安野さんも来ない?」
カラオケ?
しかも、みんな?
みんなってきっと、いつもつるんでる男子とか、大人っぽい女の子たちだよね…。
「止めとく。あたし用事あるから帰るね」
素っ気なく返事をして帰ろうと立ち上がった。
「あ、待って!」
急に、腕をつかまれた。
「え…ちょっと」
「今日だけで良いからさ…やっぱ無理?」
なんであたしなんだろう。
彼の周りには可愛くてもっと大人でオシャレな女の子たちがいるのに。
「なんでそんなに、あたしにかまうの?」
口に出したつもりはなかったけど、あたしの気持ちは声となって藤崎くんに届いた。
「あ、ごめん…」
彼はあたしの言葉を聞くと手を離してくれた。
言い過ぎたかなって思ったけど、面倒な事からは極力避けたいから良いかなとも思った。
「じゃあね…」
あたしはそう言って教室の前のドアに向かった。