今関は土下座したままかれこれ10分はそのままだった。対する私は無言で考えていた。
口止め料の100万円。そのお金は本当に他意がないのか。謝っている相手はレイプ魔。単純に謝罪を謝罪として受け取るべきではないのかもしれない。
お金を渡して今後は和姦という形でセックスさせてくれ・・・とか、
お金を渡して反応を見ながら暴行する・・・とか。
考えが煮詰まらない状態で今関を見ると、疲れてきたのか、両腕が震えていた。
本当に悔い改めようとしているのではないかと振り出しから考えてみる。
こんな堂々巡りが続くかに思われたが、意外なことに、空腹に耐えかねたキックが私の足に爪を立てた。
「いったぁ!」
そこで緊張の糸は切れた。今関も一瞬顔を上げてこちらを見た。
腹が立ったのでキックの首根っこを摘まんで土下座の今関の頭に乗せた。するとキックはバランスを崩しそうになった弾みに今関の頭の上でも爪を立てた。
さすがに何か言うだろうと思ったがまたしても無言だった。キックはコチラに駆け戻ってきた。キックを抱き抱え、撫でてやると嬉しそうに喉を鳴らした。
今関の頭からは血が滲み出ていた。
私は決心した。
「お金は受け取ります」ポツリと言った。
「ほ、本当ですか?黙っててもらえるんですね」
この時の今関の満面の笑みに、私は秘かに吐き気を催した。
「それはあなたの今後の行動次第です」
「はい。何でも・・・何でもします。許してもらえるんなら」
絶対に許さないと心で思いながら、今関に小さく微笑みかけた。
「もう今日は帰ってください」
何かを期待していたのか、今関はショックを受けた様な顔をして帰っていった。
魚眼レンズで今関の部屋の扉が閉まるのを確認して鍵を閉めた。
今関が土下座していた跡には衣類用の消臭スプレーを振り掛けまくった。
今関を私は絶対に許さない。
だから、今関への復讐を楽しんでやる。
パワーバランスは今、私の方に大きく傾いてきている。これを利用して彼に復讐の限りを尽くしてやる。
私は100万円を強く握り絞めていた。
この日、キックは数日振りの食事にありついて嬉しそうだった。
・・・つづく