「ここです、九州博多ラーメンどんたく。どんたくって言うのは、昔の福岡で毎年5月に行われていたお祭りの事です。オランダ語で休日の意味なんですよ」
「へぇ〜、そうなんですか」
「らっしゃい!」
暖簾を潜ると威勢のいい掛け声が響いた。
「まいど!お、今日は珍しくえらいべっぴんさんを連れて来たねぇ!」
「大将、二階の座敷でいい?」
「あいよ!相変わらず暇だから座敷貸し切りね!」
二人は階段を上がり、十二畳程の座敷でテーブルを挟んで座った。
「ネオさん、この店はね、昔の本場の博多ラーメンを食べさせてくれる数少ない店なんですよ」
「博多…私の父親も博多生まれなんです。だから私にとっても博多ラーメンというのは故郷の味でもあります」
「そうね!ネオさん博多の血混ざっとるとね!」
「ええ!そうです…たい?(笑)」
「あ、来ました来ました。これこれ、これが本当の博多ラーメンですよ。数々食べ歩きましたが中々本場の味を出してくれる店が無くてね」
「ごめんなさい、割り箸一本無駄にしちゃうけど」
そう言ってNEOは長い髪を束ね上げ、割り箸を簪(かんざし)代わりにして挟んだ。
その仕草を見た権藤は思わず一瞬ドキッとしてしまった。
「いただきます。…ズズーッ…うん!この麺の硬さ、まさに私が求めていた物です!」
「そうでしょう?それにこの九州男児の心意気の様な真っ直ぐなストレート麺、博多ラーメンはこうでなくちゃいけません!」