マットの上でくるくる回って技を決めたあいつを拍手がつつむ。男子生徒からもちらほら褒め言葉が聞こえていた。
「あいつすげえな…運動もできて頭もよくて、運動だけのお前とは全然ちゃうな」
「うるさいなあ」
美弥は同じマンションの同じ階に住む幼稚園からの幼なじみ。小学校からずっと毎朝一緒に学校へ行き一緒に帰る。それがいつも当たり前で周りの奴もそれを今さらからかったりしない。俺らが一緒にいるのは、当たり前の光景だからだ
――「邪魔しまーす!」
特に用はないけど、なんとなく今日も美弥の家に寄った
「おばちゃんは?」
「しごとー」
ベッドに腰掛けながら尋ねると、美弥は俺に貸す漫画を探しながら答えた。あったと言って漫画を俺に手渡す。それと同時にあいつが何かに気づく
「翼、ボタンとれかかってる」
「あ、ほんまや」
「まったく…ほら、貸して」
カッターシャツを脱いで渡すと裁縫道具を取り出した