下に着ていたTシャツのまま、借りた漫画を読みかけ手を止めた。なんとなく美弥の隣に座って作業を眺める。
俺は今、父さんと小3の弟の3人暮らし。
父さんのギターに負けた母さんは弟の彰が生まれてすぐ、死んだ。
これでも料理はまあできるようになって洗濯なんかも手慣れてる。それでもやっぱり苦手なこともいっぱいあって、器用で世話好きな美弥に何度も助けられている。
「できた!」
手早く作業を終わらせた美弥からシャツを受け取り礼を言うと、俺の足が何かに当たった気がした
「ん?何これ?」
俺が手にしたのは高校のパンフレットだった。
「んー西高のパンフ」
裁縫道具をしまいながら面倒くさそうに答える美弥。
西高といえば俺の学力じゃ到底届かない場所にある。
「西高…行くん?」
「…うん。そのつもり」
美弥は俺に背を向けたまま振りかえろうとしない
「…だから、やっと別々やな。あんたじゃ到底西高なんて無理やもんねえ。」
「……」
俺は黙ってパンフをパラパラめくる。
毎朝、決まった時間になるチャイム。ドアを開けて謝る俺。怒りながらも待っててくれている美弥。
そんな当たり前が、なくなってしまう