五十嵐の話に耳を傾けていた母親は、家族と共に医師の元へと向かった。
五十嵐は、菜々と花音の元に来ると「臓器提供する事に、なったよ。ありがとう。最期にゆいの顔見ていって欲しいんだ」五十嵐の言葉に頷き、花音は、さっき逃げ出した場所へ菜々と戻ってきた。
ゆいは、穏やかな表情をしていた。
花音がゆいの顔に触れるとそこには、温もりがあった。花音の頬を涙がつたう。
「…(ゆいちゃん、さようなら。)」
花音は、心の中でお別れをすると、ゆいの目から涙が落ちた。
花音達は、ゆいからの言葉に思えた。
菜々と花音は、病院を後にした。
それから、2日後たまり場では、ゆいのお別れ会が開かれた。
哀しみの中で、生前のゆいのあのパーティーの時のビデオが流れた。
花を持ち、「お姉ちゃん!本を読んで」とせがみ、屈託のない笑顔で本を見ているゆいの姿は、悲しみを超えて、みんなを温かくした。
会が終り、家路に着くみんなの表情には、穏やかな優しさがあった。
花音は、期末試験のためしばらく、たまり場には通わなかった。
試験が終り、気がつけば、温かな陽射しが時折差し込む季節になっていた。
「花音!テスト終わったし、買い物でも行こうよ」沙希が飛んでやってきた。「いいよ。」
そう言って二人は、街を歩いた。
花音は、純粋に楽しかった。「ちょっと、お茶しない?」と言いながら、沙希は、どんどん喫茶店に入って言った。
花音は、遅れて入ると、そこには、五十嵐がいた。花音は、声をかけようと近づくと、五十嵐は、女性と一緒だった。
花音は、さっと向きを替えると沙希の腕を掴んだ。
「いっいたい。何?」
「沙希、向こうの席に行こう」五十嵐から視覚になる席に沙希を連れていった。
花音のは、何故だか胸が苦しかった。「(誰だろう…?)」気になって仕方がなかった。
見たいけど、見れない花音は、外の流れ行く人の姿をみていた。
花音の心は、鷲掴みにされたように痛かった。
「何だか、顔色悪いけど、大丈夫?」沙希が聴くと「あっ、うん。疲れたのかなぁ。」と濁した。
沙希は、ずっとお喋りが止まらず楽しそうだった。
外に目を向けた花音の視線の先には、海斗が女の人と楽しげに歩いていた。花音は、ただ…それを景色のように見ていた。