「おい、そっちの女性は無関係だ、銃を下ろせ」
「それが関係無くもないのよ。ごめんなさい、権藤総理」
「どういう事だ」
「実は牛島総帥に、国防軍が武器の調達などをバックアップしてくれるという交換条件で、あなたをクーデター賛成の考えに導くよう依頼されたのよ」
「二人は繋がっていたのか…上手い事ハメられたって訳だ…」
「ええ、でも総理、あなたがとても魅力的な人だから、危なく本気で好きになってしまいそうだったわ。最後までレクチャー受けたかったけど残念です」
「大丈夫だ、あの世でたっぷりレクチャーしてもらえ」
「どういう事?」
「自分の目的はあくまで九州を日本の領土に戻す、という事だ。独立なんて許す訳がない。君達のクーデター計画を利用して、総理を失脚させる大義名分を作っただけだ」
「裏切られた…って事?」
「いつの時代も革命に裏切りは付き物だ。今頃君達のアジトに我々の軍が出向いて一掃作戦を開始してる頃だ。あなたもここで死んでもらう」
「何ですって!」
「牛島、お前って奴は…」
NEOが化粧ポーチに忍ばせた拳銃に手を伸ばそうとした動作が合図になってしまったかの様に、牛島の「撃て!」の号令と共に数発の銃弾が権藤とNEOに向け発射された。
着ていた赤いアロハシャツがどす黒く染まる出血を帯びた権藤とNEOは、折り重なる様にソファーに倒れ伏した。
朦朧とする意識の中権藤はNEOに話し掛けた。
「そうだ…思い出したよ…僕ら昔バーみたいな所で会ってるね…澪ちゃん」
「ええ、そうだった様な気がする…あの時はごめんなさいね…後藤さん」
「ごめんなさい…って?」
「うん…いいの…」
「駄目だ…君の顔が見えなくなってきた…」
「また…いつか逢えるといいわね」
「…そうだな」
この日朝から降り続いた激しい雨は、次の朝を迎えても降り止む事はなかった。