「……せ・聖夜…あの…」
「──……なんですか?朱斐お嬢様」
白藍はあれからすぐ呼び出しが掛り、朱斐を家に送り届けるとすぐに帰って行き、デートと言うより朱斐の家までのドライブになった。
「あの……お・怒ってる…の?」
朱斐が帰宅すると、笑顔の聖夜が出迎えてくれていたが、口端に怒りが見えた。
「いいえ、わたくしはお嬢様にお仕えしている身。怒れる立場ではありません」
聖夜はキラキラ輝きオーラを放ちながら、笑顔を見せているが、かなり怖い。
朱斐がビクビク怯え、一歩後退する。
「ご…ごめんなさい!一言も何も言わず、白藍について行って……し…心配…した?」
「──……するに…決まってるだろ!!こっの馬鹿!!」
聖夜が、怒鳴ると朱斐が更に怯え、目に涙がたまっている。
「ご…めんなさい。ごめ…んな…さい」
「──ッ…わ…るかった。朱斐…」
聖夜が、怒りを押さえ朱斐の頭をポンポンと軽く叩く。
「お帰り、朱斐」
聖夜が、まだ少し仏頂面で言うと、朱斐は涙を溜めた目で聖夜を見上げ、笑顔を向けた。
「ただいま、聖夜」
後日。
「──……可愛そう」
「悪かったと思ってるよ。やつあたりして…」
朱斐は陶芸に夢中で、聖夜と桃実の話は聞こえていない。
「なんて言うか…可愛い妹か娘を知りもしない男にとられる心境って言うか……簡単に言えば腹立つ」
聖夜の苛立ちを見て、桃実に不安がよぎる。
「──……聖夜は…朱斐ちゃん…の事…す…」
「?」
桃実が無表情の顔をうつ向かせ、顔が曇る。
「見て!見て!」
「おっ上手い、上手い。よく出来たな」
「うん♪桃実さんも見て下さい」
朱斐が、形が象れた器を桃実に見せる。
「どうですか?」
顔に泥がついている朱斐が笑顔で桃実に訊いた。
桃実は顔をあげ、朱斐の力作では無く、朱斐の顔を無言で凝視する。
「?桃実さん…」
「……」
桃実は目をふせ、変わらない無表情のままポツリと上手と言った。
「本当ですか?嬉しいです。後はこれに色をつけないと…」
と言いながら朱斐が二人から離れた。
「どうかしたのか…?桃実」
「……」
私の腕の傷さえなければ、私の事なんて無視できるのに…
哀れな聖夜…