――ここはどこだ?
『…また……逢い…ま』後ろから聞こえる声
―誰だ?
そう思いながら振り返った。
巨大な桜の木の下に1人の女性。
俺はその女性から眼を離せなかった。
綺麗で儚く今にも消えてしまいそうなそんな彼女をただ俺は見つめていた
『今は叶わぬ…この恋もいつか…きっと……あなたと結ばれる日をお待ち…して…』
そう言いながら彼女は消えていく
―待ってくれ
『いつか…きっと……』
ピッピッピッピ
目が覚めると俺は泣いていた。
―何故だろう
涙が止まらなかった。
『またあの夢か』
そう言いながら天埜夾哉(てんのきょうや)はベットから起き上がった。
―コンコン
扉を叩く音がした。
『入れ』
夾哉は短い返事で答えた。『失礼します。』
そう言いながら入ってきたのはメイド長の鹿乃鏡(しかのきょう)だ。
『なんだ?』
『坊ちゃまそろそろ学校へ向かう時間です』
『何!?』
夾哉は時計に目をやる
PM8:05
慌てて着替えを済まし家の前に停めてある車に乗り込んだ
『行ってらっしゃいませ』
こうしてまた夾哉の退屈な1日が始まった。
夾哉は学校が嫌いだった理由は2つ
小さい頃から英才教育を受けた夾哉は、小学生の時に高校の内容は全て理解しているから
もう一つは、夾哉には友達と言う存在がなかった夾哉に近ずく奴はいるがそれは好意や興味ではなく夾哉の家が目当て。
夾哉の家は世界の三分の一を占める大財閥だからだ。
だから夾哉は学校ではいつも孤独感を抱いていた先輩も後輩も教師ですれも夾哉の後ろにある権力を恐れていた。
―つまらねぇな
そんな事を思い夾哉は学校を飛び出し、走った。目的地は無く
ただがむしゃらに走った
気がつくと
夾哉は公園に来ていた
―公園か
夾哉は公園を散歩する事にした。
しばらく公園を散歩していたら広場に出た
広場の真ん中には巨大な桜の木があった。
あの夢に出てきた桜の木が
夾哉は桜の木を目指し歩いた。
―やっぱり夢で見た桜と一緒だ周りの景色は違うけど
夾哉は無意識に木に触れていた
どこか懐かしい感じがした
『綺麗な桜ですよね』
どこからか声が聞こえた夾哉は声がした方をみて驚いた
1人の女性がいた
よく似ている
夢に出てきたあの彼女に無垢で綺麗で気高い少女が……
夾哉はただ、ただ彼女を見つめることしかできなかった。