予告ホームラン【4】(最終話)

 2010-03-11投稿
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相手ピッチャーは渾身のストレートを投げてきた。

Aも渾身のフルスイングで迎え打つ。

固唾を飲みながら見守る大観衆。

Aのバットはついにボールをとらえた。

舞い上がる打球。

外野フェンス目掛けて追いかけるセンター。

その間もAは全力で走る。

打球はセンターのすぐ真上のフェンスで激しく跳ね返り、外野の定位置辺りまで大きく転がった。

Aはすでに二塁を回っている。

ようやくショートがボールに追いついた時、Aはなんと三塁を蹴り、ホームに向かおうとしていた。

三塁コーチは慌てて制止したが、Aはまったくスピードを緩めようとしない。

まさかのホーム突入に、ショートも驚いてキャッチャーに送球する。

壮絶なクロスプレー。

津波のように滑り込むAに、キャッチャーは強固なブロックで対抗した。

静まる観衆。

そして一呼吸置いた後、審判が叫ぶ。

判定は――セーフ。

歓喜の大歓声が球場全体にこだまする。

たちまちチームメートがAを取り囲み、祝福の輪を作る。

予告ホームランは、生涯初のランニングホームランで幕を閉じた。

Aはずっとスタンドに手を振り続けていた。

Aの現役生活、最後の夜の出来事だった。

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