鬱蒼とした森の中を、一人の女性が歩いていた。
女性は自らの赤い髪を鬱陶しげに掻き上げて立ち止まると、鋭い眼差しで前方にある集落を見つめた。
―あれから二年…か。
彼女はゆっくりとその集落に向かって進んでゆく。
―ようやく復讐の目処は立った…。
集落に人影は無く、家々が静かに建ち並んでいるのみであった。
所々に焼け焦げた家もある。
それらは焼けて長い時間が経っているのか、柱は崩れ、炭化した屋根は砂塵で覆われていた。
彼女は表情を変えずにそれらを見つめながら、奥へと進んだ。
彼女が向かっていく先のには幾つもの墓が建てられていた。
「ただいま、母さん、父さん、エル」
彼女はそう呟いて、三つの墓が並んで建つ場所の前に立った。
墓にはそれぞれ「レイス」「サーナ」「エル」という文字が刻まれていた。
「もうすぐだから…」
彼女は屈み込んで、懐から三つの赤い花を取り出した。
「絶対に、私が…」
―父さんたちの無念を晴らしてみせるから…。
言葉は続かずに、心でそう呟いた。
彼女の瞳からこぼれ落ちた涙が赤い花に当たり、キラキラと光ながら地面に落ちていった。
「…で、これから僕はどうしたらいいんですか?」
ザックは少し不安そうな表情で、リリアに尋ねた。
「そうねえ…」
リリアは小さく唸って、首を傾げた。
「あと一週間契約が残っているんでしょう?それなら、まずはそれを先にやってもらった方がいいかと」