「八嶋、アイツが英語の先生だぜ?笑えるなぁ!」
真っ先に口を開いたのは霧島だった。霧島は大きな声を出して笑い始めた。
「ああ、さすがにビビったな。あの格好で英語はないだろ。」
俺も笑いながら話した。
「まぁ、ビジュアルも強烈だったけど、すごい変わってるよね。私語を推奨するなんて。」
怜が俺の隣に移り、かがんでそう言った。
「そうなんだよな…授業中英語しか話せないなんて…俺、英語苦手だから苦痛だぜ。」
霧島が急に笑うのを止め、少し元気がない声で言った。
その後俺達は松葉先生の髪型や髭の話をして笑いあった。そしてしばらくするとチャイムがなった。怜と霧島はゆっくりと自分の席へ帰っていった。
(次は世界史か…いったい次はどんな先生か?)
そんなことを俺が思っていると「それ」らしい先生が入って来た。
(何か見覚えがある顔…あっ、野々口先生か!)
世界史の先生は先日掃除の際に会った野々口先生だ。
(よかった〜、この先生ならまともな授業を受けられそうだ。)
俺は顔を少し和らげた。野々口先生は俺が会った中で唯一のまともな先生だった。
野々口先生は手短に号令を終え、話しだした。
「はい、おはよう。君らとは始業式で会ったけど、一応自己紹介しておこうか。」
そして先生は黒板の方を向き、文字を書き出した。野々口先生は始業式の時とは違い、少しラフな服装をしていた。こうして見るとどこにでもいそうな若者である。
「宮垣先生からご紹介をあずかりましたけれど、僕の名前は野々口龍治といいます。ここの生徒からは『ノグチ』と呼ばれています。まあ君らはノグチ・ノノクチ好きなほうで呼んで下さいね。」
野々口先生が自己紹介を終えた。前の松葉先生の時のような緊張感はなく「なごやかムード」が漂っていた。
「じゃあ自己紹介も終わったから授業しようか。まず、世界史の年間授業計画表を配ります。」
先生はそう言ってプリントを配りだした。
「みんなもらった?じゃあそのプリントを見て下さい。この世界史の授業はプリントを使って行います。毎回プリントを配るからみんななくさないようにね。もちろんなくしたら…言わなくてもわかるね?」
野々口先生は最後の言葉を言い切らずに説明を一旦終えた。