裕也
「最初から辿って行くが……姫野がいなくなった。
この場合、考えられる事が二つある。
その1、姫野は自分の意志で建物から出ていた。
その2、自分の意志に拠らず出ていた」
達也
「その1だと、いないのは説明できるけど、出ていた理由が判らないね」
そこにお茶をお盆にのせて柚姫とヒビキがキッチンから戻ってきた。
ヒビキ
「例えばさ、姫野さんは外に何かを見た。
それを確かめようとして外に出たら佐賀さんを殺した奴に連れ去られた……とか」
柚姫
「理由としては、いいですね。
でも佐賀さんが殺されたばかりですよ?
そんなときに独りで外に出るでしょうか?」
ヒビキ
「うーん……そうだよね」
確かに柚姫の言う通りだ。
よほどのことがないかぎり、外には出ないだろう。
だけどこのペンションにいないということは、少なくとも外に出たことになる。
裕也
「とりあえず、可能性その1の結論だ。姫野は外に異様なものを見た。
多分、ヒビキの言う通り佐賀さんを殺した奴だろうな。
で、外に出たところで予期せぬ事態に遭遇、そして戻らない」
ヒビキ
「おかしい事だらけだね」
達也
「まぁ、判らないことが多すぎるからね」
と言い訳しながら、裕也は第2の可能性の検討に移った。
裕也
「さて、可能性その2だが」
柚姫
「自分の意志に拠らず出ていた……ですか?」
裕也
「ああ、考えられるのは誰かに意図的に連れ出された、だな」
意図的に……そうなるとおのずと出てくるのが抜け道や隠し部屋の存在である。
しかし、さっきペンションを見て回ったがそれらしきものは見つからなかった。
達也
「やっぱり抜け道の類いがあるのかな?」
裕也
「その可能性は高いな。
そうじゃなければ姫野を連れ出した奴がどうやって建物の中に侵入したか説明がつく」
柚姫
「あとは……その抜け道がどこにあるかですね」
そう柚姫が言うと食堂に重い沈黙が支配した。
ふっ、と僕の頭の中にある可能性が浮かび上がった。
このことを言うべきだろうか。
僕は判断を下せなかった。
いや下すことが出来なかった。
なぜならそのとき、外から悲鳴のような叫び声が聞こえてきたからだ。