「おはよう野々宮くん。 まずは君の置かれている状況から簡潔に説明しよう。」
鈍い痛みが付き纏う頭に機械的な声がやけに響いてきた。
「君が居るその場所は四方が2メートルで出来ている鋼鉄の箱の中だ。」
野々宮「あ?一体何を言ってるんだ?」
どうやら寝ていたらしい身体を起こしながら呟いた。
野々宮「!?」
目を開けているのに当たりが真っ暗闇だ。慌てて 自分の目の辺りを手で探ってみたが目隠しなどはされていないようだ。
「その箱の中は照明などが一切無い。勿論窓なんて物も存在しない。」
野々宮「なんだここは?なんで俺はこんな所にいる?」
酷く混乱した野々宮にさらに機械的な声は説明を続けた。
「今は呼吸が出来ているがそれはダクトから機械で酸素をその箱の中に送っているからであるが、その機械もこの説明が終わってから30分で止まってその中は酸素がいずれ無くなって君は死亡してしまう」
野々宮「え?」
「急にこんな事を告げられた野々宮は大変混乱するであろう。しかし、私は君を殺したくてこんな所に閉じ込めた訳じゃない。」
機械的な声が淡々と話を続ける。
「むしろ私は野々宮くんには是非生き延びてもらいたい。そのためにその箱の中にはそこから脱出するための道具とヒントが幾つかある。」
辺りは真っ暗闇で勿論のこと道具やヒントなんて物は見える訳がなかった。
「生きてそこから出たいなら今までの記憶、経験は当然ながら今までは出来なかった閃き、勇気を 総動員して欲しい。それから君が死にそうになっても私は助けたりなんてしない。死にたくなければそこから出るしかない。」
野々宮「おいおい、何を勝手に言ってるんだ!?」
野々宮は冗談の様な自分の状況に無理に笑いながら言葉を発したが顔は笑っていなかった。心の奥の方ではこれは本当なんだと察知していた。
「それでは野々宮くん頑張ってくれたまえ。」
そういってその声はもう聞こえてくることは無くなった。
野々宮は真っ暗な空間で自分の存在を確認するかのように、または恐怖を必死に押し殺すかのように膝を抱え込むように身を小さくした。