ゆなは、由宇の腕の中でキスをされ、振りほどこうともがくが由宇の力強さに断念した。
男は、由宇とゆなのもとから去っていった。
由宇は、横目で男が去ったのを確認すると、ゆなから離れた。
「じゃあ。また、店に食べに来てね!」
そういうと約束していた女のもとへ向かった。
(なんでょ…。なんなの?)ゆなは、気持ちが付いていけなかった。
少し胸が痛かった。
由宇は、いつものように1日が過ぎた。いつものように…。
「いらっしゃいませ!」由宇が出迎えた。
(あっ、あの時の…。)
その客は、以前と同じ窓際の席に向かった。
由宇は、歩き方がおかしかったので、酔っているのか?と思った。
いや、酔ってなんかいなかった。
彼女は、目が見えなかったのだ。
由宇は、初めて話しかけた。
「ご注文は、いかが致します?」そういうと彼女は、由宇に初めて声を聞かせた。
「あれっ?この前の店員さんではないでしょう?」
「あっ、ハイ。はじめまして…。」
「ふふふっ。なんか店の挨拶じゃないね!」と笑った。
「じゃあ。あなたのお勧めは、何ですか?」
「僕は…。トマトとスモークチキンのペンネグラタンとチーズフォカッチャが大好きです」由宇は、自分の大好きなメニューを伝えた。
「美味しそう!じゃあ、それをお願いします」
「わかりました」
由宇は、彼女の食べるところを早く見たかった。
「お待たせしました。」由宇が食事を運んで来た。「あのぉ、右側にグラタン置いて頂けますか?」
「なるほど…。」由宇は、思わず声にしてしまった。
「いただきま〜す」彼女が食べ始めた。
「何かありましたらお声をかけて下さい」
由宇は、近くで食べるところを見たかった。
彼女は、グラタンの香りをいっぱい堪能していた。一口食べると物凄い笑顔に変わった。それからは、無心になったかのように、あの天使の笑顔で食べていた。
「ごちそうさま!」
満足そうな表情で微笑んでいた。
「いかがでしたか?」由宇が話しかけた。
「とっても美味しかったです!何だか、幸せの美味しさでしたぁ」
彼女は、くしゃくしゃな笑顔で言った。
「また、願いしますね!私の好みと合いそう」
「じゃあ、僕の名前教えておきます。僕は、高山由宇です!」
「あっ、ハイ。私は、凛です!須田 凛」
「凛?凛でしょ?」
由宇が声のする方を振り向くとそこに、ゆなが立っていた。