いつの間にか他の部員達も話に加わり、神妙な面持ちで大澤とともに話に聴き入っていた。
そして哲哉は、話しを続ける。
「あの時、誰よりも近くであの兄弟を見ていた自分が、小次郎をとめるべきでした。
だけど自分は、あの兄弟の真剣勝負を見てみたいという思いと、たかが風邪ぐらいという甘い認識から、それを怠ってしまった。
…小次郎を見殺しにしてしまった。それが自分の、八雲にたいする負い目です」
哲哉の表情が、苦痛に歪んでいた。
話を聞き終えた大澤は、殴り倒した時に八雲が発したあの言葉を思い起こしていた。
彼の語った後悔していたやつとは、ほかでもない八雲自身の事だったのだ。
大澤は、ようやく真壁八雲という男を理解できた気がした。
そして、小次郎の死に責任を感じている哲哉を憐れみ、愁眉をつくって視線をおとした。
「八雲はてつを怨んでなんかないさ。むしろ頼りになる相棒の存在に、感謝してるんじゃないかな。
じゃなきゃ、あんなに笑顔でいられないさ。
だから、そう気に病むなって」
小早川が笑顔でそういうと、哲哉は救われた思いで微笑んだ。
小早川に先を越された大澤だったが、このチーム内に満ちた仲間を思いやる心に笑みをうかべた。
「しかし真壁にそんな過去があったとはな、少しは……」
「でぇぇぇぇぇっ!!」
大澤の言葉を遮って叫び声が轟くと、全員が一斉に発信原の方へと視線をむけた。
そこには須藤の卍固めに悶絶する、八雲の姿があった。
「……今の話にでてきた真壁八雲とは、本当にあの男の事か?」
ため息混じりに大澤がつぶやくと、哲哉は自信なさ気にこたえた。
「………多分」