退学。
ノーザンランドが決めた処分にリュートは、素直に応じるつもりでいた。
しかし、リュートの後ろでそれを聞いてしまったオヨは強く反発した。
「待って下さい!リュートは、ただ友達を助けたかっただけで…」
それはリュートを助けたい一心だった。今回はリュートの正義感から起きた事で、決して恥じる事などしていないと必死に擁護した。
しかし、そんなオヨにノーザンランドが冷たく言い放つ。
「オーエン・マクレガー、友達を止められなかった君にも責任がある。よって君には一週間の停学処分を科す。充分に反省したまえ。」
「停学?なんでリュートだけが…。それなら僕だって…!」
「以上だ、出て行きなさい。」
「っ!……」
何も言い返す事が出来なかった。オヨは己の無力感に苛まれながら校長室を出て行こうとした、その時、リュートの顔が一瞬だけ眼に入った。
「ありがとうな」
そう言いたそうな笑顔を見せたのだ。オヨはその顔を生涯忘れる事はなかった。
「リュート・エバンス」
さらにノーザンランドが続ける。
「君は自分がした事が正しいと思っているか?」
そんな突然の質問に、リュートは迷わずに思った。
当然だと。
処分は受け入れる、だが、森の中で警備兵に見つからなければ、サンケ族にサヤがさらわれる事もなかったと、今でも思っていた。
「今回の事、サヤ・ルソーは望んでいたのか?私はそうは思わない。確かに身体を弱めていたが、それでも他人を思いやる事の出来る強い女性だった。友達を救いたいと思う気持ちは分かる、だが、結果どうなった?病気の彼女は森の中で命の危険に晒されているんだ。彼女の危険を想定できなかった君は、とても自分勝手でわがままだ。」
そして最後に、リュートへこう告げた。
「君はサヤ・ルソーに並ぶ優秀な生徒だった。きっと素晴らしい修道士になれただろう、とても残念だ」