由宇は、凛がいつもと違って淡々と食べているのが残念だった。
「あれっ?凛ちゃんじゃない?」
由宇は、今、気付いたようにゆなに教えた。
「うん?そうだねぇ。あらっ!隣…。見たことが…。」
ゆなは、中々思い出せないでいた。
由宇は、凛が誰と食べていたかなんてあまり気にしてなかった。
ただ…由宇の知っている凛ではなかったのがつまらなかった。
ゆなは、凛の事をさておき、話を切り返した。
「由宇君。私と付き合ってと言ったら?」
「いいよ」
「なんで簡単に返事出来るの?」
「みんな一緒でしょ?別に断る理由ないし…。」
由宇の言葉に頭にきた。
「みんな一緒ってなに?由宇君は、自分から誰かを好きになった事ないの?独り占めしたいほど…。」
ゆなが熱くなって聞くので由宇は、真面目に答えた。
「あるよ。物凄く好きで、毎日逢いに行った。でも…彼女は、俺を連れて周りから注目を浴びている事に酔っていただけだったんだ。いつもそうだった。
だから…割り切る事にしたんだ。」
ゆなは、冷静に言葉を口にした。
「でも…それって楽しいかもしれないけど、つまらないでしょ?
自分のキモチが動かないんだから…。」
その通りだった。
「これから、探せば?」
ゆなは、由宇に言いながら、自分も同じだと思った。
「私は、探すよ。自分の心が揺れ動かされる人を。」
由宇は、ゆなが輝かしく見えた。
(心を動かされるか…。)
由宇は、毎日に飽きていた。
しかしそんなに簡単に変われるんだろうか…。
由宇は、ほんの少しだけ、変われる事を期待することにした。
「あっ、思い出した!」ゆなが一変して大きな声で言った。
「凛といた男の人。凛のチェロの先生だ。」
「先生?ずいぶん若い先生だねぇ。あんたとタメぐらいに見えたけど?」 由宇が聞いた。
「確か…。私の一つ上かな?チェロのコンクールで優勝する腕前らしいよ。凛は、目が見えないでしょ?
その分、他の五感が敏感でどうも、絶対音感があるみたい。それで薦められたらしい…。チェロを!」
「ふ〜ん。」
(聴いてみたいな…)
「この間、凛のおかあさんに電話したら、凛、今回は、コンクールの為に帰って来たんだって。
確か…。22日だったけな?」
22日、由宇はゆなとコンクール会場にいた。
凛の演奏が始まった。
由宇は、凛の奏でる音に感情を感じた。