拓「…練習?」
拓朗が左手のスティックを指さし尋ねながら、隣に腰かけた
慶「…まあ」
慶太郎は器用にスティックをくるくる放り投げて遊んでいる。その様子を眺めながら、拓朗は口を開いた
拓「なんか…お前のことやからあの三宅に口出しするんやと思ってたわ。そこバスドラ重い!…とか」
慶「んー…確かに“俺やったらそここうすんのになあ”とかはありましたけど…でも今はみっくんがドラマーのバンドやから」
拓「?」
慶「今これは別のバンド。俺がドラムのバンドじゃないって思って。」
拓「そうか。…やっぱ…叩けないのは寂しいん?」
慶「そりゃあ、寂しいですよ。でもある意味いい機会かなって」
拓「いい機会?」
慶「俺、右利きなんですよ」
拓「おう…知ってんで?」
慶「ドラムでも左右に差がでる時があって…左が右についていけなかったり。だからこれを機に左手を鍛えようと」
左手を開いたり握ったりしながら慶太郎は笑った