「えっ!まだって…。オレ、やっぱり、軽い男のままの感じ?」由宇は、自分のやってきた事を悔いた。
「ちっ違うの!そうじゃなくて…。時間が…もう少し時間が必要なの」
由宇は、少しホッとした。
「由宇君。ごめん。もう少し、今のままでいたいんだ。ダメかな?」
「ううん。凛ちゃんと会えるなら、ちゃんとオレ自身も見て欲しいし。凛ちゃんなら、外見じゃなくて、俺の中身見てくれると思ってるんだ」
由宇は、ちゃんと自分をわかってくれる人がやっと見つかった気持ちだった。
凛は、顔色を変えた。
「由宇君。自分の中身って…。私が、目が見えないから、外見見られないから、思ってるの?」
「いや…。…。」由宇は、言葉が出なかった。
そうなのかもしれないという気持ちもあった。
「好きになったのは、だからじゃないんだ。凛ちゃんの幸せそうに食べている笑顔がすきだから…」由宇は、もう隠さずストレートに言葉を伝えた。
「由宇君。私の事誤解してる…」
「誤解って…。」
凛は、両手を出すと由宇の顔を触りだした。
「由宇君て、私好みの二枚目だ。背も高いし…」
由宇は、愕然とした。
「私だって外見で好きになる。でも…それは、悪いことじゃないはずだょ。中身だけで人を好きになんてならないでしょ?」
由宇は、ただ…聴く事にした。いや、言葉が出なかった。
「由宇君の事好きになるだろうと思う。でも…まだ…」
「まだって、何が?」由宇の言葉に喫茶店のマスターが凛に話しかけた。
「凛ちゃん。この子の目真っ直ぐ君を見てるよ。そう、君の見える笑顔も心の笑顔も…。
あの時の…彼と同じ目をしてるょ。
もう、3年たった。君には、まだ、3年かも知れないが…。食べる時だけでなくて、もう笑っていいんじゃないかな。
凛ちゃんも踏み出さなきゃ。もう、彼は帰って来ないんだょ。もう…。」マスターの言葉に凛は、泣き出した。
由宇は、訳がわからなかったが、凛の心の深い闇をみてしまったようだった。
「由宇君。私をここに連れて来てくれた人は、ここからの景色が大好きで、いつも、私に細かく説明をしてくれたの。
季節や陽の射しかた、空気の感じ…。
私は、そんな彼とここにいる時が一番幸せだった。たくさんの笑い声をくれた…。でも…彼は笑えなくなってしまった。」
凛は、溢れ出す涙とともに言葉にした。
「彼が…大好きだった。私は、彼の笑顔も命も奪ってしまったの…」