校長室を出てからしばらく、ノーザンランドの言葉が頭から離れなかった。
サヤを助けてやりたい。
それはただの思い上がりだったのか。
自分ではどうする事も出来ない現実だったなのか。
足を一歩踏み出す度に、心に重くのしかかっていた。
しばらくして、学校を出た先の校門の柱に、人が立っているのが見えた。
日が沈みかけ、辺りが暗くなり始めていた頃で、近くに行くまで誰か分からなかったが。
「オヨ…」
気まずそうにオヨが近いいてきた。
「これからどうするつもり?」
「さぁ、まだ分からないよ」
「サヤを助けに行くんだろ?それなら俺も連れて行ってくれよ」
「駄目だ!」
大きな声を出して否定してしまった事に、リュートはハッとした。
「ごめん、そんなつもりはないよ、本当に。オヨは停学で済んだんだ、これ以上問題を起こすな、いいな。」
「リュートのせいじゃない…。俺がリュートにエムルの事を話したんじゃないか…。インバ山に棲むエムルならサヤの病気を治してくれるかもって、だからお前は…」
「オヨ…」
オヨは今にも泣き出しそうだった。
オヨもサヤがさらわれたのは自分のせいだと、責任を感じていたのだ。
そんなオヨにリュートは語り始めた。
「なぁ、サヤってさ。病気で身体を弱めてから家にいる事が多くなったじゃん。でも昔はすげーおてんばだったよな。男に対して、強気ってゆーか。」
「うん…てゆーか、リュートだけにな、お前は妙にライバル心を持ってたじゃんサヤに、絶対勝てないのに。」
「当たり前じゃん!女だし、一つ年下だし!でも何をやっても勝てなかった、あいつには…」
リュートは学校の中でとても優秀な生徒だった。もって生まれた才能を早くから開花させ、同級生はもちろん、自分より上の学年の生徒にも負けないほど、リュートは他を圧倒する力を持っていた。
そんなある日、一人の天才少女がリュートの前に現れた。