出会いは5年前の6月。降りしきる雨の中にたたずむ黒い傘の彼女は、間違いなく「一目惚れだ」と近寄ってきた。 もう何十年も動いていないこの錆びれた赤いボディに触れる冷たく濡れた指を今でもハッキリ覚えている。 建設業を営む若夫婦に買われたのは昭和の時代。平成の代になって私なんかに手をさしのべる彼女は「変わり者」以外のなにものでもない。 ただの物好きだと…。
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