――バララララッ!!
大きな音をたて、弾丸が弾けるように飛んだ。
だが。
銃口から放たれた弾丸は、標的の晶に掠りもせずに目の前の大木を穿っただけだった。
何故なら そこに晶はいなかったから。
晶は兵の真横にいた。
「…人を殺すのが怖いなら…撃たなきゃいいだろ?」
晶が諭すように言うと、兵は懐に忍ばせた小刀を晶に向けて言う。
「黙れ!全ては教祖様の為だ!!」
「あんたらの教祖様はそんなに怖いのか?」
「!!」
「あんた、人殺しの顔してねーもん」
晶は続ける。
「なぁ、人を殺したら
罪悪感あるだろ?
だからアンタは さっき
撃てなかった…。
もういいじゃねえか…
殺し合いなんてしなくて
いいじゃねぇか…」
晶の言葉に、兵は堪えきれずに涙を流しながら言った。
「人を…」
伝う涙は、乾いた土の上に落ち、消えていく。
「人を殺さねば、代わりに女房と娘を殺すと…」
それ以降の兵の言うことは言葉になっていなかった。
晶は黙って兵の小刀を取り上げ、捨てた。