知ってるよ。
君の手が行き場を迷う理由。
でも、あなた知らないでしょ。
あたしの涙が 行き場を迷う理由。
――…31…――
『亜美ちゃん早いねー!おはよー!』
『おはようございます。』
集合時間になると、部員のみんなが集まってくる。
『はよーっす。』
『あ、ゆうたおはよ。』
『……。』
『なに?』
『今日はちゃんと仕事してね。』
『昨日もちゃんとしました!』
朝からからかうな!ばか!
『あれ?ボールが綺麗になってんじゃん。』
大野先輩が練習前にボールを見て言った。
やっぱり気が付くもんなんだなぁ。
『サキ?』
『あたしじゃないよ…?』
『あ、それ沢木ですよ。』
鈴木くんがあたしを指差した。
『まじ?あみちゃん?』
『あ…昨日はあんまりお手伝い出来なかったので…』
『うわぁ…すっげぇうれしい。さんきゅ。』
磨いたボボールを部員に見せ付けて、後でお礼言っとけーなんて言うから
あたしは部員の人全員に何回も"どういたしまして"を言った。
『沢木ほんとにありがとな。』
鈴木くんが帽子を深くかぶりなおしながらお礼を言った。
『あ、こちらこそ、手伝ってくれてありがとう!』