ころは1932年のことでありました。
東京から遠く離れた、沖縄県宮古島―ここに、ある心優しい、でものんびり屋さんの13、14くらいの男の子が暮らしていました。名前はお龍といいました。
かれはいつもどおり真っ白い砂浜に、のんびりと翡翠色の海をみながら寝そべっていました。つよい日差しが波を、きらきらと輝かせていました。
その時後ろからいきなり声がしました。
「どうしたの?」
振り向くと、後ろに淡い水色の着物を着た14くらいの歳の女の子が立っていました。かれはどきっとして、頬を赤らめました。
「海をみてたの?」
と彼女は聞きました。
「うん」
とお龍ははずかしそうにいいました。ききながら、その女の子はお龍の横にしゃがみました。
「おなまえは?」 とお龍はききました。
「わたしはお琉というの。でもわたしもここでぼーっとしてるから、みんながのんびりやさんって…」といって彼女はくすっとわらいました。
「似てるんだね」
とお龍はいいました。いいながらも、彼はすっかり彼女に見とれていました。けれどお琉はそれに気づいていたのでした。よくわからない幸せがお琉の胸に込み上げてくるのでした。