『那智先輩〜』
保健室のドアをゆっくりと押しながら那智先輩の名前を呼んでみた。
………
返事はなし。
保健の先生はいないみたい
保健室の中をキョロキョロしながら那智先輩を探すけど、見つからない。
『なんで?』
「だーれだ♪」
はっ!?
『那智先輩でしょ!』
「当たり〜」
『いきなり後ろから抱きつかないでください!』
「悠紀キョロキョロしちゃって可愛かったからさぁ〜」
『意味分からないですよ。早く離れてください!』
「やだー」
『…
なんかあったんですか?』
「…悠紀は感がいいね。」
『先輩より全然いいと思いますよ?』
「そうか?俺負けないよ。」
『いつもはボーッとしてるくせに〜』
誰かがこの光景を見たら恋人どうしに見えるんだろうね。
彼女を後ろから抱き締める彼氏。そしてここは保健室…何が始まるんだろうね★
そんな感じ。
そんな風に見えるだけで、ただの先輩と後輩だから、この状況でもドキドキしないし。
「俺ってゲイに見える?」
『またなんか言われたんですか?』
「うん…」
『気にしない方がいいですよ。那智先輩は那智先輩らしくいればいいんです!』
「そうかな…?」
『そうですよ!』
「ありがと!」
その瞬間那智先輩が私を抱き締める力が少しだけ強くなった。