――晶の父と母は、水鶴と会わなくなってすぐに殺された。
家のすぐそばに自神と皆神の境界があったから、という要因が主だろう。
両親は晶と晶の兄、山口晴一(ヤマグチ ハルイチ)を家の押し入れに隠し、自らを犠牲に二人を護った。
それからの二人は、お互いを助け合いながら生きていった。
…晶が9歳の時だった。
15歳になった晴一は、戦いに参加することになった。
「にーちゃん…」
「何?心配かよ、晶?」
ケラケラと笑って晴一は言った。
「だってもし にーちゃんが死んだら俺…」
幼い晶の脳裏に、押し入れの隙間から見えた両親の凄惨な光景がよぎる。
「…お前みてぇな泣き虫な弟を残して死ねるかよ、バァーカ」
ニカッと笑って、晴一は晶の髪をくしゃくしゃにした。
「あーっ、何すんだよ、バカ兄!!」
ムッとして晶が言う。
「てめッ、にーちゃんに向かってバカとは何だ!バカとはッ!!」
「んだよー!!にーちゃんだってバカって言ったじゃん!!」
「俺はいいのッ!!」
「何でだよー!?」
「兄貴の特権ってヤツ?」
「ずりィーッ!!」
「はははっ!!」
盛大に笑う晴一。
その表情は、明日戦いに駆り出される15歳の少年とは思えないほど明るかった。