彼女たちのために唄うのは傲慢だろうか
日の光が美しい春の午後
冷たい風
桜の命を容赦なく散らしていく
街は喜び勇んでぐうっと背を伸ばし
あの青の中で笑っている
小さな生き物たちが目を覚ます季節
新たな衣装をまとって
春が楽しげにスカートのすそを持ち上げ駆けていく
そんな当たり前のことが胸に染みる
――今年の春を迎えられなかった多くの命の代わりに
私は大きく息を吸い込む
そしてやはり唄い出した
幸せを幸せだと囁く小さな唄を……