――「なあ、達也。さっきんとこのドラムやけど、もっとなんか変えられへんかな?」
「んー…こう?」
「そう!そんな感じ!」――
俺と達也が出会ったのは中2の時。仲良くなった俺らは高校生になってすぐバンドを組んだ。俺と達也のリズム隊はすぐに名をあげ、俺らは“ワイルド・ワン”を組むことになる。
俺と達也はお互いのことを誰よりもよく知ってるし、一番の理解者やった。
そんな達也の父親のだらしなさは近所でも有名。真っ昼間から酒を飲んで、ふらふら近所を歩いて警察の世話になるのもしばしば。
そんな男に我慢出来るわけもなく、達也の両親は離婚。俺が聞いた限りでは、達也の母親が達也を置いて出ていくなんて、想像できない。だからおそらく、当時、まだ7歳くらいだったあいつは選んだんや。
一人になってしまう父親が寂しくないように、父親のところに残ることを。
あいつはそういう奴。だから家を出てからも父親の様子を週に一度は見に行く。
俺なら面倒くさくてそんな奴、会いにも行かない。
けど、達也は、少しも嫌がる様子を見せず当たり前のように自ら会いに行く。
あんな父親から、どうしてこんな息子ができんのか、俺には分からなかった