「達也はまた打ち上げに慶太郎連れてきたんか」
「ええやろ?別に」
「まあ、慶太郎なら歓迎やけどな!」
ライブ後のメンバーだけの打ち上げ。そこにはよく慶太郎も達也についてきた。
「慶太郎、ドラムは楽しいか?」
「うん」
こいつはあんまり感情を表に出す奴じゃない。達也の話からすると、周りにも誤解を受けることも少なくなかったらしい。だから、そんな慶太郎にとって、達也は一番理解してくれる奴なんやろう。あいつが達也を慕っているのは目に見えてわかるし、達也もあいつのドラムの成長を楽しみにしてた。
慶太郎は誰よりも俺らの夢を応援してた。
そして、俺らの夢は後一歩のところまできていた。
そう、ほんまにもうすぐやった。
「…それでな、光希、そこの事務所の社長が今度のライブ見に来んねん!!すごない?」
さっきから何度も同じ話を聞かされ、光希もいい加減呆れていた。それでも俺の気持ちは高ぶっていて、この興奮を抑えられなかった。
その時やった。
プルルルルル…
「はい、もしもし」
その電話が俺を喜びから一気に悲しみに突き落とした