「…はは…、笑い話にもならない…な」
「父親助けといて、自分死ぬってなあ…」
葬式にはかなりの人がいて、あいつがどれほどいい奴だったのか思い知った。
けど、あいつの父親はおらんかった。
俺は、あいつの父親に会ったことはない。どんな奴か聞いたことしかない。
でも、もしそいつがこの会場にいたら、殴りかかってたかもしれへん。
達也の命の上に、あんなだらしない父親が生かされてると思うと、胸が詰まった。
テツの俺の嫌いな煙草のにおい。葬式独特なこのにおい。
こんなとこに居たくない。
その時、俺ははっとして周りを見渡した。
「…隆一?」
俺はその場を離れ、あいつを探した。
慶太郎はどこや
しばらく歩き回り会場の外で段差に座る慶太郎を見つけると、黙って隣に座った。慶太郎は俺の方を見向きもしなかった。ただ、足下に転がる石を拾っては投げ、拾っては投げ、そんな無意味な行為を繰り返していた。
「…どうするん?…バンド」
しばらくして、慶太郎が口を開いた。
「…分からん…でも、あいつがドラマーじゃないバンドなんて…続けたくねえよ」
またしばらく互いに黙った。