その日は雨が降っていた。
戦いから帰ってきたのは、左胸と首からおびただしい量の血を流し、冷たくなった兄の死体だった。
「にーちゃん」
晶が呼びかけても…。
返事は 無い。
「にー、ちゃん…」
晶が晴一の首に触れた。
晶の手に、冷たい血がベッタリついた。しかしそれは雨によって洗い流され、消えていった。
「にぃちゃんッ…!!」
「晶君…」
教祖が晶に触れようとした時だった。
「しなね、って…」
「…晶君?」
「死なねーって言ったじゃんか!!バカ兄、バカ兄、バカ兄ぃぃぃぃ!!」
晶が叫んだ。
降る雨は一層強まり、晶の叫びは雨の音に消されていった。
「うわあぁあぁぁあああぁあぁぁあ!!わあぁあああぁあ!!」
降りしきる雨の中…
晶は ただ、泣き叫んだ。