六年前
エルドラには十華と呼ばれる、十の名家が存在する。十華は政治、経済に直接関与はしないことが暗黙のルールとなっているが、どの世界にも顧問的立場で顔を出している。しかし、現存する名家は六つ。校長の家オッジ家、アトスの家オレイア家、アラミスの家カティマ家、ポルトス家ディオラ家、そして我が家ザリ家とキュリア家
六つになった理由は、没落 跡取り問題と様々だが、俺が生まれる少し前くらいから六つになったらしい。十華には長が存在し、四年に一度の十華会談 蓮華によってその家が選ばれる。蓮華には家の長はもちろんのこと、家族・執事までも同席する。この蓮華の前までは、三期連続我が家 ザリ家が長を務めていた。長に選ばれるには様々な理由があるが、大抵の理由はカードを上手く使えるか、その知識が深いかだ。そういう理由なら校長のオッジ家が選ばれそうだが、校長はいつもその役を断っていた。
我が家が三期も務められたのは、優れたカード使い 俺の父親がいたからだ。しかし、人は老いには勝てない。この蓮華で長が変わることは、明らかだった。
ザリ家のお嬢さん、行方不明ですって。
うるさいっ
何でもあの ‘柱’ の事件に関係してるそうじゃない。
うるさいっ
息子さんはねぇー、あまりお上手じゃないそうだから。
うるさぁーいぃー
俺は聞こえてくる、雑音をくぐり抜け、建物の外へ駆け出した。
ドカッ
何かにぶつかった、その先を見ると女の子がしりもちを着いていた。
ごめん。
五月蠅いのは、お前だ。
ごめん。
こらっアリス。この子謝ってるんだから、追い討ちかけるなよ。
偉そうに言うな。ママから逃げられた男。
グギッ それを言うなよなぁー。俺だって好きで…ブツブツブツ。
これが俺とアリスとの出会いだった。