『はい。お待ちどうさま!!』
店主は、俺達が注文した品をテーブルへ置くと、
眠そうな目をして、次の客の対応をしていた。
『ユウ。冷めないうちに食べなさい。
ギョーザは、6個あるうちの1個を父さんにくれ。』
『そう言えば親父‥‥金、大丈夫?!
さっきのタクシー代とかも、何であんの?!
財布の中身全部、盗られちゃったじゃん?!』
キョトンとした顔で俺の顔を見つめるユウの、その表情を見て、
なぜか少し、ホッとした。
まだまだ子供だなと思った。
『おぅ。任せとけ。
父さんな、昔、カツシンのファンだったんだ。』
『は?!何ソレ?!』
『パンツの中に、1万円札隠してたんだよ。』
『え?!マジで?!
汚ねーじゃん!!』
『汚い言うな!!
おかげでラーメン食えたんだから!!』
『汚ねーもんは汚ねーよッッ!!』
パンツの中の1万円札の話に、かなり動揺していたユウだったが、
こうして親子、男同士で飯を食いに来たのが、
おそらく初めてだっただけに、
俺には、この時間が、すごく幸せなひとときとなったのだった。