僕と和子と敬太郎 第九話

カルロス伊藤  2010-03-31投稿
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夏の名残の中にも秋の気配が感じとれる様になった9月の末のある日、僕等三人は近くの鎮守様のお祭りに出掛けた。
祭りと言っても、町の小さな鎮守様に秋の豊作を祈願するもので、屋台が数軒出てる程度のこじんまりしたものだ。
敬太郎は家を出る前から、そわそわして落ち着かない様子だった。和ちゃんも、そんな敬太郎の様子に気付いたらしく、
「敬ちゃん、さっきからなんか落ち着かんなあ」
「そ、そうか?わし昔からお祭り好きじゃけん興奮しとるんや」
(少し落ち着けよ)と思ったが、今夜の敬太郎の計画に加担してる僕も、何だか妙に落ち着かなかった。

「金魚すくいやっとる、やろやろ!」
和ちゃんにせがまれ、三人でやる事にした。
「あん、もう!うまくすくえんわ」
「ようし、見とれ!」
敬太郎が意気揚々と挑戦したが、意外と彼は不器用で、思った様にすくえなかった。
僕は彼を立てる為に芝居のひとつもすれば良かったのだが、つい真剣になってしまい、彼の立場を無くすかの勢いで次々と金魚をすくい上げてしまった。
「健ちゃん上手いやん、金魚すくい得意なん?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど」
「凄い凄い、これ絶対特技やな」
和ちゃんはそう言って尊敬の眼差しで僕の顔を見た。
ふと敬太郎に目をやると、明らかに不機嫌そうな顔で、そんな和ちゃんを見ていた。(失敗したな)と僕は思った。

こりゃ早いとこ消えなきゃいけないな、と思いながら、社に繋がる短い階段に足を掛けた時、その出来事は起きた。

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