人類総会体制の下、宇宙文明は未曾有の拡大と繁栄の時を迎えた。
それは中央域文明圏を主軸とする保守本流の領導による物であり、その主役となったのがユニバーサルエリート《宙際士大夫》達であった。
初期の彼等はドクター=キマリとの戦いに自発的に参加した知識人や技術者やその子弟であったが、時を追う毎に組織的恒常的に後継者を補充する必要に迫られ、育成機関として文教惑星が設置された。
言わば銀河版パブリックスクール、もしくはアイビーリーグだ。
文教惑星は最終的には七つまで増設され、教育・学芸・研究のメッカとして中央域文明の最も重要な核の一つとなった。
航宙大植民時代は、六百年もの長きに渡って今に至る。
様々な欠陥もあり幾多の危機にも見舞われもしたが、ともかく現在まで続いて来たのだ。
これまで見てきた様に、地球時代末期のテクノロジー=クライシス以来の歴史を大きく動かして来たのは、保守と革新との途絶える事なき対立と相剋であった。
良くも悪くも時には激しく衝突し時には融合や調和を志しながら、お互いが入れ代わり立ち代わり時代を引っ張って来た事実は否めない。
そして恒星間大戦期を潜り抜け、最終的には保守が勝利して今日を迎えるのだ。
だが、革新陣営が本当に壊滅したのか?
或いは完全にその存在意義を失ったのか?
それはまだ分からない。
いずれはまた再びかつての火星や航宙遊牧民族の様な勢力が出現し、宇宙を変えて行くのかも知れない。
どちらを決めるのかは飽くまでもその時代時代の人々の総意なのだろうから―\r
まだまだ語るべき事も残っているが、ここに人類が宇宙に進出して以来の航宙三千年史の筆を置く事にしよう。
銀河元号二二星紀現在に置いて特筆すべき動きとしては、最外縁《タルタロス》に巨大軍閥が出現した事であるが、それについてはまた別の機会に述べる事にしたい。
《航宙機動部隊前史・END》