『永遠になるまで待ちましょう』
...Prologue
(伯爵が狂うまで)
滑り落ちる針。
彼女はもう待てない、と言った。
今羽を美しく広げて、飛び立とうとしている。
それを引き留めようと私はもがいた。
「頼むからここへいてくれ」
"私にはもう気力も情熱もない。君を利用したりはしないから"
と。
それに対する返答はとても簡潔。
「いやです」
ただ一言。
美しい彼女の背中に生えた美しい羽は、ますます美しく広がる。炎が燃え上がるように。
「私の天使、お願いだ。頼むから行かないでくれ...」
お願いだ。
捜し物があって地上(ここ)へ来たという彼女。
燃え上がる羽。
悪魔のような容姿。
私は彼女に心底惚れ込んだ。
彼女の目的が私ではないとしても。
逃がしたりしない。
天上の天使。
人ではない彼女。
「さようなら、伯爵」
窓から乗り出そうとする彼女。
その羽に私は躊躇いなく銃口を向けた。
そう。引き留めるためならばどんな手段も厭わない...
―かくして、天使の羽は手折られる。