誰もが困惑し、混乱していた。
何が起きているのか。
佐賀が一体、誰に殺されたのか。
姫野は一体、誰に殺されたのか。
それ以前に、二人は殺されたのだろうか、死んだのだろうか。
そこが達也には確信が持てなかった。
だが、ここにいる者たちは二人が死んだという前提で物事を考えている。
裕也でさえそうだからだ。
達也のように疑問を持った者はいない。
たしかに、ここに集まったメンバーは多分、強いのだろう。
裕也や柚姫の剣術を見れば、そこいらの殺人犯でも相手にならないだろう。
しかし……達也は思うのだ。
それは………。
馬鹿げた想像だろうか。
ありえない可能性なのだろうか。
だが皆無とはいえない。
このありえない可能性を裕也に話すべきだろうか。
いや……やめておこう。
少なくとも今は………。
証拠が少なすぎる、これでは裕也も納得してくれない。
考えていることに区切りを付けると達也は周りを見渡した。
食堂では先ほどから終わりの見えない議論が続いていた。
奈々
「もう、いい……」
奈々のその声で終わりの見えない議論に終止符を打った。
奈々
「あれこれ詮索しても真相は判らない。
明日になれば元老衆が来てくれる。それまでここに篭城する。」
一真
「篭城だぁ!?
ふざけんなっ!!だいたい、電話も通じねえ、携帯電話もダメ、どうしろってんだ!!」
緋山は奈々の言ったことに噛み付いた。
しかし、奈々はさらりとこう答えた。
奈々
「文句あるなら帰っていいよ。森の中を独りで歩いていく気があるならね」
一真
「ちっ……!」
緋山は大きく舌打ちすると口を閉ざした。
奈々
「みんな、班はこのままでいく。
篭城といってもすることは昨日と同じ。
交代で見張りを立てて建物を見張り、元老衆が来るのを待つ。
あと絶対に独りで行動しないこと……いい?」
奈々がそう言うと全員、曖昧な表情で頷いた。