僕は、島を出るのが初めてだった。
本島は、車ばかりでひかれそうになる。
じっちゃんの運ばれた病院は、とっても大きくて迷子になりそうだった。
僕は、さとばばちゃんの手を握ってじっちゃんのいるところへいった。
「こちらへ…」
看護士さんに連れて行かれた部屋にじっちゃんが寝ていた。
「瑠海、ばばちゃんは、先生に話し聞いてくるから、じっちゃんの側さいろ!」
僕は、恐る恐るじっちゃんのお腹の辺りの布団が動いているか、確認した。
動いていた。
しばらくして、じっちゃんは目を覚ました。
「おぅ〜瑠海。心配かけたなぁ。」
「じっちゃん…。痛い?」
「大丈夫!!」
「あぁ、じいさん、生きてて良かったなぁ。てっきり、あっちの世界に呼ばれちまったかと思ったょ。」
「あぁ、迷惑かけたなぁ。この通り、あっちの世界から断られちまったょ。」
じっちゃんとさとばばちゃんのいつもの会話に僕は、大笑いをして病院の人に怒られちゃった。
その日、僕とさとばばちゃんは、病院に泊まることになった。
僕は、じっちゃんの隣のベッドで寝る事になったんだ。
病院で寝るなんて初めてでわくわくしちゃった。
お布団に入りながらじっちゃんが話しだした。
「瑠海。この間は、悪かったなぁ。じっちゃんも歳だ。いつまで、瑠海と一緒にいられるか…。」
「じっちゃんは、大丈夫だょ。ね?まだまだ、元気なんだろ?」
「あぁ、今日みたいな事もある。清海、帰ってきたいらしいんだ。お前を棄てたかもしれんが、母親じゃ。どうだ瑠海。考えてみておくれ」
僕には、じっちゃんが死んじゃう事なんて考えられなかった。
絶対に嫌だ!!
じっちゃん…。大好きなんだ!!やだ。やだよぉ〜。
かあちゃんと暮らすなんて…。わからない。
僕の頭の中は、こんがらがっちゃった。
なんだか眠くなってきた。
「クウィ…。」
「…?うん?」
ショールの鳴き声のような、違ったかな?
「クウィ〜…。」
やっぱりショールの声だよ!僕は、病室の窓から外をみたら、ショールが岩場まで来ていた。
(来てくれたんだね)
僕は、病院を抜け出して海に走った。
「ショール!来てくれたんだね。」
ショールは、ずっと船を追いかけてきたみたい。
僕は、嬉しかった。
「ショール!先にお帰り!」
「クウィクウィ!クウィ!」
ショールが何だか…騒いでいた。